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ワーキングスクールワーキングスクールアソシエ 講座Ⅰ

 
テーマ 奪われている職場の権利 
     労働者派遣法制定後の20年
 
講師 脇田 滋さん(龍谷大学法学部教授)

 
 
 ■ 公演録パンフレットの一部ご紹介
 
はじめに
 
龍谷大学の脇田です。
今日の話は、一応、テーマとしていただいているのは、この20年、非常に労働法がおかしくなっているということですね。労働者派遣法が85年にできまして、それ以降、職場の状況が変わっている。それでは、日本の状況というのは、どうなっているのか。というようなことを中心に、ちょっと基本的な話なのでなかなか具体的な身近な話につながるか心配なんですが、許していただければと思います。
(スクリーンの画像を指して)これは目次です。現状としまして、あまり詳しく話しませんが、日本の場合には「労働法氷点下の世界」と僕は表現しているんですね。労働法というのは、労働基準法や労働組合法などがあり、これは色々活用することができるんですが、中々使いにくい状況になっている。労働基準法自体が、本来は「最低基準」なのに、「最高目標」になっている。そんな意味で、「労働法氷点下の世界」ということを簡単に振り返ってみたい。
それから次に、本来の「働くルール」とは何か、ということで、ILO(国際労働機関)などの国際的な水準、あるいは外国ではどうなっているのか、というようなことをお話しします。
3番目に、日本では特にこの10年、新自由主義と雇用破壊が進んでいる。10年と言いましても、そのもう一つ前の10年に派遣法というものができて、言わば、「ホップ・ステップ」という準備がされていた、ということを3番目にお話します。
4番目は、特に去年当たりから流れが少し変わってきた。特に、昨年7月の参議院選挙で与党が大敗北しまして、参議院で与野党が逆転するという中で、僕が生きている内にはないと思っていた、派遣法を本当の意味で改正するという話がどうも現実味を増してきている。ということで、「ピンチはチャンス」という立て方をしていまして、特に、派遣法を焦点に労働者側が反転攻勢していく。そういう状況と課題について話せればと思います。

1、「『労働法氷点下の世界』の広がり」―世界的に異常な世界―

長時間・過密労働で働く労働者
それではまず、「『労働法氷点下の世界』の広がり」というところに入ります。大きくは、日本の場合には労働時間が非常に長いということですね。厚生労働省の基準でも年間3,000時間働いて、脳や心臓の機能が止まって倒れたら過労死として認定する。こういう認定基準が出ているくらいなんです。
法定時間では年間2,000時間が本来ぎりぎりなんです。ところが、3,000時間というのは、その1.5倍。週40時間の1.5倍の週60時間働いて、1年3,000時間ということです。そういう労働者が700万人近くいる。20代30代では4人に1人かそれ以上いるということで、過労死予備軍という言い方もする。それくらい長く働かされているというのが、日本の大きな問題点です。
これは、ちょっと本の宣伝になるんですが、こういう本(『労働法を考える』新日本出版社)を去年出しました。僕は、イタリアに1年いたことがありまして、そこでイタリアの労働者はどうか、ということもここで書いていますので、読み物としてそこだけおもしろかったという話もあります。もしよかったら、読んでいただきたいと思います。
簡単に言えば、イタリア人というのは、本当に働きません。これは絶対に間違いのないことです。それと、有給休暇を絶対に取ります。日本の場合は有給休暇自体が取れなくなっているんですが、イタリアの場合は「有給休暇はこれを放棄してはならない」と憲法にあるんです。日本は憲法には書いていませんね。僕は、憲法改正反対なんですが、もし改正するときは、そこだけ追加するのはいいかなと思います。
イタリア人は休むために働いている。大体、夏の時期だと最低3週間は休みを取りますね。だから日本人と全然違う。過労死の話をイタリアでしたことがあるんですが、全然理解してもらえない。「働いて、働いて、働いて死ぬのが過労死だ。日本人は過労死の危険にさらされているんだ」と言ったら、「働いて、働いて、働いたら、休めばいいじゃないか」と言われる(笑)。非常にまともな感覚なんですね。

年200万円以下の低賃金労働者の急増
次に、最近、大きな問題になっているのは、非常に低賃金の労働者が増えていることです。特に、これは政府の統計なんですが、年収200万円以下の人が1000万人を超えている。さらに、4人に1人が200万円以下。こういう年収だということです。これは要するに自立できないということです。
生活保護の場合には、家族がいれば、それだけプラスされます。生活扶助や住宅扶助というものがあります。標準でも、月に20万円は超えているんですね。子どもがいて、奥さんがいて、いわゆる自立した家庭の最低生活というのは、生活保護で見れるわけです。しかし、そういう最低生活よりも少ない年収の労働者がたくさんいるということで、「働いても貧困だ」という意味でワーキングプアと呼んでいる。そういう人たちがそれだけ増えているということです。

非正規雇用に急増、「官製ワーキングプア」の拡大
レジュメを見ていただいたら分かるんですが、こういう風に200万円以下の年収の人が増えている最大の原因は、僕は非正規雇用が非常に増えてきたということだと思います。左の表を見てもらうと、正規雇用がどんどん減って、非正規雇用が増えている。ただ、この図はインチキでして、正規雇用と非正規雇用がぐっと押し付けた形になっています。本当はこんなには近づいていないんです。大体、正規雇用2に対して非正規雇用が1。2:1くらいの割合です。まだ、そうなんですね。だけど、これは全体の場合であって、女性の場合はほとんど同じです。それから、若い人も女性に近い。1:1になってきている。ということで、このままいけば正規雇用よりも非正規雇用の方が多いという状況になりかねない。
それは、その右側に出ていますように、若い人たちが非正規雇用にどんどんなっているということなんです。これを見ても1982年~2002年の20年間の数字が分かるんですが、特に、若い20歳~24歳の方が2002年の非正規雇用の率がぐっと伸びているわけですね。つまり、新しく仕事を始める人たちの多くが、最初から非正規雇用として働き出すということが見て取れる。
確かに、最近、景気が回復して正社員が増えていると言われているんですが、大きな傾向としては、こういう風に若い人たちの間で非正規雇用が広がっているのが特徴です。それは年収200万円以下の労働者が非常に多いということの原因になっています。
「官製ワーキングプア」というのは最近の言葉です。公務員というのは一番恵まれていて、雇用が安定していて、毎年、号俸(ごうほう。公務員の職階に応じて定められた給与)が上がっていく。右肩上がりと言われた日本的雇用ということですね。辞めるときにはものすごい給料が上がっていて、一番安定雇用の典型と言われていたんです。しかし、その公務員の中で非正規雇用、つまり、非正規公務員というものが出てきている。それが、出てきているどころか、レジュメの左側は自治労(全日本自治団体労働組合)の数字なんですが、全職員に対する割合がぐっと上がっている。特に、この20年間に84年のときにはまだ6、7%だったものが、今では25%を超えているということですから、3倍~4倍。こういう割合で増えています。 》続く
 
 
ワーキングスクール アソシエ 学習公演録パンフレット
A4 66ページ 領価 300円 

 

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