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支店の従業員を使い捨てに
住宅販売業勤務多田俊也(39歳)
■執拗な退職勧奨
いつか読んだ本のなかの一節に『鼠は猫に勝てない。猫は虎には勝てない。虎は象には勝てない。しかし、人間はやり方によっては象をも倒す。それが人間の英知だ』とありました。これをサラリーマン社会に置き換えると、「ヒラ社員は課長に勝てない。課長は部長に勝てない。部長は社長に勝てない」でしょうが、ヒラ社員が直属の上司?社長をも倒すことを可能にするのが、ユニオンの英知ではないでしょうか。
東京本社の不動産会社がビジネスチャンスを求めて、震災後の神戸に進出し職安を通じて人を募集していたところに、私は一九九五年二一月に就職しました。東京より派遣された単身赴任の支店長、副支店長が、社長の親戚の住居用マンションの一室を事務所代わりにしている会社です。東京での付き合いのあるゼネコンより、分譲マンションの仕事を一つ回してもらい、販売を開始したものの、次の仕事が続きません。単身赴任組はそろそろ支店を閉じて、マンションの販売利益を手土産に東京へ帰ろうというムードの中、九六年九月頃より、じゃまになった私への執物な退職勧奨が始まりました。精神的に追いつめられた私は、〝個人でも入れる組合と、聞いていたある組合の労働相談に出かけました。「言葉の暴力だけでは証拠が残らない。具体的な攻撃がくるまで待つように」
とのアドバイスをもらい、勉強会へ参加を決めました。通信教育も受けながら、労働基準法、労働組合法、日本の労働運動の歴史を学ぶにつれ、「こんな勝手な話はない。このまま使い捨てにされてたまるか」のファイトが心の底から湧いて来ました。
■テープレコーダで嘘を暴く
そして、九七年四月に、一方的な六万円の給与カットを受け、労働組合のメンバーであることを公然化し、一、 給与カット撤回、二、神戸支店の将来計画の明示を要求事項とし団交を求めました。支店長は顔色を変え、「うちは組合など認めない」との態度です。地労委の団交斡旋も支店長は、「私は使用人の立場です。当事者能力がないので、何もわかりません。すべて東京本社の指示で動いております。本社は団交に応じるつもりはないと言っております」と逃げに入りました。
「このままではだめだ。神戸だけの闘いでは前に進まない。時間稼ぎをしてマンションが完売すれば、神戸支店を閉じて、東京に逃げ帰るつもりだ」と考えた私は、東京本社を相手にするために、管理職ユニオン・関西に席を移しました。東京管理職ユニオンの方に団交要求書を直接本社に届けてもらった後二人で本社の役員のところまで直談判に出かけました。ことわりを入れ、カセットコーダーに「神戸の運営は全部神戸支店長にまかせてある。あなたの給与カットは降格人事なんだ」との発言をテープに録音して帰りました。
これは四月一日の神戸支店長の朝礼での「会社組織が変わったので、今までの雇用契約は一日廃除になりました。今後は新しい給与体系となります」との発言と完全に矛盾するものです。私を降格する人事考課を本社に出したものの、理由がないので私に言えなかったのです。
そこで私は、管理職ユニオンの封筒で役員との議事録に、この支店長の朝礼の発言記録を同封して、本社に送り付けました。支店長は「俺は朝礼でこんなことは一切言っていない。あなたのねつ造だ」と、嘘を嘘で塗り固めようとします。『平気でうそをつく人たち』(草思社九六年刊)という本がありますが、全くこの人物は後で証拠が残らないと思うと、平気で前言を
被るがえします。この事のズル賢い小人物はどこの会社にも必ずいるものです。しかし、私は送り付けた役員との発言記録の最後に(重複する表現は省略しました)と書き添えました。同様に、同封した支店長の朝礼での発言記録にも(重複する発言は省略しました)と最後に書き添えました。役員は私が胸ポケットから、「録音させて下さい」と、小型テープレコーダーを取り出したのを覚えています。神戸支店長は私が常に胸ポケットに小型テープレコーダーを入れて仕事をしているのを、それ以降チラリチラリと気にするようになりました。「しまった。あの朝礼での発言を記録された。いや、単なるハッタリかもしれない」と本人は悩んだことでしょう。私への発言は非常に気を使うようになりました。
■整理解雇
マンションは販売開始後、一年一ケ月を経過し、九七年一〇月になっても完売しません。これは支店長が東京への手土産として利益を欲配り、相場より1割以上高く値段設定したからです。支店長は遅くとも夏には引き上げるつもりのようでしたが、この計算違いと私の組合加入の計算違いで、本社に神戸支店の経費負担を頼み続けていました。
しかし、遂に九七年.二月に本社は神戸支店閉鎖を決め、私に整理解雇を言い渡しました。
それからの私には裁判による地位保全と団交拒否による不当労働行為・不当解雇撤回を求める道が残されていましたが、もうこの会社を相手にするのはやめようと思いました。あまりにもビジョンのない会社の体質に、私はほとほと嫌気がさしていました。気持ちの上では勝利感を感じていたからです。それは整理解雇を言い渡される直前に本社に送り付けた再度の団交申込書の要求事項に、
一、神戸支店の四月一日の朝礼での発言の真偽について、組合側より資料を提示します。と一文を付け加えておいたことにより、神戸支店長は本社で責任を追求され、解雇となったからでした。
■会社でのケンカの仕万
一,与えられた権力を笠にプレッシャーをかけてくる上司と闘うには、本社における彼のメンツを潰す手を工夫すること。
二,テープレコーダーを胸ポケットに常に入れておく。何か言われたら「電車の中で英語の勉強です」と言う。必要があれば「録音機能もありますので、人権を侵害する発言があれば、テープに取りますよ」と負けずに言っておく。
三、憲法、労働基準法、労働組合法を勉強し、労働者の立場にたった理論で日頃から武装しておく。
「あんたは組合員である前に会社員だ」と言われたら、「私は会社員である前に人間だ」と言い返す。「銀行からお金を借りたら毎月約束した額を返すでしょう。その上で、どう会社を運営するかを考えるのが経営陣の責任でしょう。社員と雇用契約を結んだら、毎月約束した額を払って欲しい。私が家計が苦しいと言っても、昇級の理由にはならないから、会社も不況だから賃金カットするとは理由にならない。契約は契約でしょう」、等々
しかし、ケンカすると腹をくくった時、何よりもユニオンの存在がすぼらしいバックボーンとなり,精神的に私を支えてくれました。「言いたいことを言う。言わねばならないことを言う」のは人間的な生活の基本だと思います。
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私たちは、あらゆる不公正・いわれ無き格差と戦います。
