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精神的に追い詰め退職を迫る
外資系輸入商社勤務水谷敦子(34歳)
■リストラの対象に
一九九八年一〇月三日,人事部長から「明日,会えますか?」という電話が入った。過去の経験からいって,直接人事から連絡が入った場合,いい内容でない事を知っていたので、「まさか」という気持ちで翌日を迎えた。そして当日,心の中に何かが引っかかっている様な状態で仕事をし,夕方人事部長との面談の時がきた。
「来年は業務の合理化を図るにあたり,あなたの進退について考えてもらいたい。三月末日をもって退社してもらいたい」,まさかと思っていた事が現実となった。どうして私が?という気持ち。さすがにその時はショックで対応に困り,「今日は何もお答えできません」と言って、その日の面談は終わった。自分がリストラの対象になるなんて--毎日のようにニュースや新
聞で取り上げられているけれど、所詮他人事、私には関係のない事と思っていたのが自分の身にふりかかってきてしまった。
九年近くも勤めてきて、かなり仕事もまかされていたし、内勤の核となる立場にいる私がなぜ?能力的にも問題はないはず、リストラの対象なら他にいるはずなのに--とやりきれない気分になった。でもよくよく考えれば、入社した頃よりも会社のレベルは、はるかに下がり、決して良い環境とはいいがたい状況の中で働いていたし、チャンスがあればこの会社を離れようと思っていたので、その時が来たのかもしれないと思い、この際、いい条件を引き出して辞めた方が幸せかもしれないと考えた。自分の気持ちがはっきりしたので、これからの人事との交渉にも戸惑う事なく対応していけるだろうと自信を持った。
■精神的に追い詰められる
そして二週間後、また、人事部長との面談を迎えた。辞めなければならない理由もなく退社させようとする会社のやり方に憤りを感じながらも、交渉には冷静な態度で臨んできた。しかし人事側は、何とか辞めさせるために、ある事ない事を言っては精神的に追い詰めようとしてきたし時にはセクハラめいた言葉まで言ってきた。事実と反すると指摘すると、また違う事を言って追い詰めるという事のくり返し。
とにかく辞めさせる事に必死で、そのために小さな事柄をこじつけているという状況であった。こんな形でいままでリストラが実行されてきたのかと思うとあきれたし情けなく思った。私としては絶対に許す事はできない。
会社に対してまちがったやり方をしている事をわからしめたかった。でも毎週のように交渉が行われ、さすがに限界を感じ始めていたので、どこか相談に乗ってもらえる所はないかと考えていたところ、知人がリストラにあい、相談を持ちかけて一番いい結果を出せたという情報を教えてもらい、そこが管理職ユニオン・関西だという事を知った。
■団交の効果
もうここしかないと思い、退職勧奨を受け始めて約一ケ月経った後、事務所を訪れた。幸運にも書記長に話を聞いてもらう事ができ、今までの経過と自分の気持ちを伝えた。組合に加入する手続を済ませると同時に、組合から会社への団交の申し入れの手続が取られた。あまりにも迅速に対応してくれるので、驚きも感じたが、同時に心強さも感じた。信頼できる友人、知人に話はしていたものの、やはり?プロ?の力も借りる事ができればtと思っていたので、今まで張りつめていた気持ちがほんの少しだけ楽になったような気がした。
組合はあくまでも本人の意志を尊重するとの事だったので、私は「辞めるけれども、今の会社の出している条件では納得できない」という事を話し、いよいよ団交の日を迎える事になった。私が記憶している限りでは、団交という事態に、会社は一度も遭遇した事がなかったのではないか。もちろん私自身初めての事なので、一体どんな状態になるのだろうと少々不安も感じていた。そして団交当日、二一月一七日。仕事を終えて夜の七時から行われた。自分の会社の人間と、組合側として向き合っている状況に、少し不思議な気がしていた。これからまた新たな交渉の始まりだ、また、一からのスタートだと思って団交に臨んだにもかかわらず、会社側は団交が始って一時間も経たないうちに撤回すると言い出した。どうして?今までさんざん辞めさせるために交渉してきたのはどうなるの?頭の中がまっ白になった。私にとっては望まない結果となり、今度は会社を辞められないという状況になってしまった。団交後、組合員の方々から「辞めなくていいのならそれが一番」と言われ、かなり複雑な心境になったものの、撤回してきたという事は、少なくとも会社側が自分達の非を認めたという事になるし不況の今、次の就職先も決まらない状態で、自ら進んで無職の道を選ぶ必要もないと思い、とりあえずはそめまま会社に残る事にした。一度リストラの対象となったので、いくら会社が撤回したと言っても、今度は世間でよく聞く〝いやがらせ〃があるのでは?と少し構えていたが、それもなく、何事もなかったように過ごせている。
二ケ月余りの出来事はいったい何だったのだろう?とも思えるが、今となっては貴重な体験をしたと思っている。一労働者として法律上守られている事柄や、反対に違法とされる行為についても、ほとんど知らずに過ごしていたので、本当にいい勉強になった。そして本当の意味での″リストラ″ が行われているのは,ほんのわずかである状況も知る事ができたし何よりもリストラは、恐れる事や悲観する事ではない事だと思えるようになった。自分の気持ちをしっかり持ってさえいれば,リストラにあったとしても充分に対応していく事ができると思った。これからの社会生活でこの経験を生かし、絶対に損する事なく過ごしていきたいと思っている。
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