二重派遣と、社会保険の未加入
大手家電メーカー派遣社員 女性(31歳) ■約束した社会保険(健康保険、厚生年金)に入ってくれない 相談者は、滋賀県K市の大手電機メーカー、いわゆる「白物」といわれる洗濯機や乾燥機を扱う協力会社の一貫組立生産工場で働く31歳の女性、派遣社員(製造職)として勤務していました。 彼女の相談内容は次の通りです。 『私は持病があって(命にかかわるような重病ではありませんが)、社会保険無しでは不安なので、時給が安くてもいいから社会保険完備の会社を選びました。 最初の2ヶ月は社会保険無し、経過後は社会保険を完備する、という契約で働き出しました。 しかし2ヶ月経過しても、雇用保険にしか加入させてくれません。「どうなってるんですか?」って経営者に聞いたら、「人数が集まらないと加入出来ない」、「支払能力あるかとか、社会保険事務所の審査がある」(注1)、 「忙しくて社会保険事務所に行く暇がない」など、とぼけられ、言い訳され、いつまで経っても入れてもらえずにいました。 社会保険に入れるアテも無いのに「完備」と偽った条件で、従業員募集・就労をさせている。どっちにしても、おかしい。社会保険に入ると時給850円、入らないと950円と言っていたことも守っていない』 要求の第一は、「約束した社会保険の加入をしてもらいたい」ということでした。 確かに、彼女から見せられた雇用通知書の「その他」の欄には“社会保険は、本人の希望及び二ヶ月以上勤務をされる方が対象になります。”との記載があります。 彼女は、前職の時に社会保険関係の勉強もしていたのですが、加入させる為にどのようにすればいいのかわからなかったのです。 相談の話を聞くなかで、雇用通知書に記載の会社住所は自宅、名称は㈱も㈲も記載なし、代表の後に氏名が書かれているだけである事がわかりました。彼女自身、工場では別の派遣会社の名札を着けて勤務させられていました。彼女を雇用していたのは、法的には個人事業主という事になります。個人事業主→派遣会社→派遣先会社の工場で勤務、いわゆる「二重派遣」(注2)の違法行為です。後の団体交渉でわかったことですが、派遣先会社と派遣会社間の契約は「業務請負契約」でした。違法の「二重派遣」であり、「偽装請負」でもありました。 相談後、彼女はすぐに労働組合に加入し、「組合加入通知書」と「団体交渉申入書」を両社に送付しました。 すると、すぐに会社側から組合に連絡が入り、早速数日後に団体交渉を行なうことになりました。 交渉事項は複数ありましたが、社会保険未加入の問題から話し合いました。会社側は「○○町のA子がいたけどすぐ辞めたり、△△町のBっておっちゃんがいたけど問題起こしてすぐクビになったり、××町のGってのはある日突然出勤しなくなって音信不通になり、派遣した会社から金払って貰えなくて40万パァになって」などと言い訳をしましたが、最終的には非を渋々認め、入社時まで遡っての社会保険加入の手続きを約束しました。この際彼女は「今後の自己負担分は給与から天引きでいいですが、過去の分はどうなるんですか?」と質問しました。ひと悶着したあと、組合の要求である「全額会社負担」を雇用主の検討課題とする事になりました。 次に、違法の二重派遣解消の為、派遣会社への「直雇用」の要求をしました。この件は、その後に個人事業主と派遣会社の出席の団体交渉を経て、派遣会社への直雇用となりました。 彼女は団体交渉後、『「何かあっても、派遣なら、派遣会社が間に入ってくれるから安心」って思ってたら大間違いでした。その派遣会社が問題だったら、どうしようもありません。私一人では、まるっきり相手にされず、どうすることも出来ませんでした。ここまでしないと、動かないって……。就職難&素人の無知につけこんだ、悪質極まりない経営者だと思いました。従業員のことなんぞ「金を稼いでくる道具」にしか思ってないとしか考えられません。団体交渉の際、2社とも、私のことを“うざがってた”ような雰囲気でした』と語っています。
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